岩手医科大学 医師卒後臨床研修プログラム

岩手医科大学 医師卒後臨床研修プログラム page 6/254

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はじめに研修医制度は全国的に、また当院においても見直しが行われてきました。選択肢を広げるという方向性は一般的になってきているようですが、逆にコースを絞って初期研修の標準化を図るべきとする意見もあるよう....

はじめに研修医制度は全国的に、また当院においても見直しが行われてきました。選択肢を広げるという方向性は一般的になってきているようですが、逆にコースを絞って初期研修の標準化を図るべきとする意見もあるようです。研修内容は病院の個性によって異なるのは当然であり、それぞれの研修医が経験する臨床の間には必然的に差異が生じます。考え方としては、一つ一の研修それ自体が貴重な実務体験として尊重されるべきということかと思います。岩手医科大学附属病院は特定機能病院として先端医療を実践すると同時に、地方都市の数少ない総合病院の一つとして地域住民の細かなニーズに応えるという機能を有しています。そこには地域医療の拠点という意味性があり、それも病院のスタッフのモチベーションを形成しています。当院での研修はこうしたバックグラウンドに支えられたものです。総合病院である以上、当院は多種多様な病態や疾患に対応するためのスキルが習得される場であり、診療科間の連携を学ぶ場でもあります。複数科による診断と治療を必要とする症例、科を横断岩手医科大学附属病院する対処が必要な合併症症例など、高度な臨床判断を要する事例に遭遇することは希ではありませ病院長ん。治療手技の習得と同時に、広い意味でのチーム医療の経験も重ねていただければと思います。医師卒後臨床研修センター長現在の医療パラダイムの根幹をなしているのはインフォームドコンセントによる医療です。こうした情酒井明夫況の裏には、すべての人々が一律に遵守すべき医療倫理が存在しないというジレンマがあります。文化や価値観の違いがその原因となっていますが、インフォームドコンセントは一つ一つの医療事例において患者と医師の間で取り交わされる最終決定手段として機能します。研修医の皆さんも出会うケースのそれぞれについて的確な判断を迫られ、インフォームドコンセントに準拠しながら治療を進めていくことになると思います。困難な事例も多いかと思いますが、どうか医療研修の道筋をしっかりと歩んでいってください。臨床研修医の皆さんへ卒後医師臨床研修制度は平成16年4月、これまでの努力目標から必修・義務化となり、社会のニーズとしてプライマリ・ケアを重点的に研修することが義務付けられました。しかし、その一方では専門化する医療を担う専門医、先端医療に従事する大学医師の減少の問題が顕在化してきました。この臨床研修制度の根幹は幅広い横断的な知識の上に専門医、先端医療担当医を育成することを最終目標としていると考えられます。岩手医科大学(以下本学)では平成22年度から厚生労働省の提示した臨床研修基本原案を基に新しいプログラムを作成いたしました。厚生労働省の基本原案は内科6ヶ月、救急3ヶ月、地域医療1ヶ月を研修すればそのほかは選択必修とする、というものです。したがって本学の臨床研修基本プログラムは基礎研修を含む内科研修6ヶ月、救急研修2ヶ月、地域研修1ヶ月を必修としました。さらに精神科・産婦人科・小児科・外科・麻酔科のいずれかを2科目以上選択必修とするようにしました。救急に関しては2ヶ月間の三次救急研修に加え、選択必修などの際の一次・二次外来当直を24回で1か月分の救急研修に充当するとしました。これ以外は選択研修とするため残り11ヶ月を自由に使うことができます。もちろん、将来の希望科をすべてここに当てることも可能です。産科・周産期プログラムプログラム責任者と小児科・周産期プログラムは選択科目の中で産科または小児科を6ヶ月加えたものです。これらのプ谷田達男ログラムで初期臨床研修の修了後に専門医の取得や大学院での研究にシームレスに移行できるオーダーメードのプログラムを作ることが可能となっています。同時に、これからの本学の臨床・研究・教育を担う若い医師を育成することも視野に入れており、皆さんのライフプランに基づく自由度の高い研修を行うことができます。岩手県は県内にある12の臨床研修病院でイーハトーヴ臨床研修病院群を形成しており「たすきがけ」研修や、初期研修医のオリエンテーション、2年次研修医のスキルアップセミナーなどを合同で行っています。さらに研修指導医を養成するための指導医講習会や、指導医スキルアップセミナー、研修病院の合同面接会、医学生に対する説明会も合同で行っています。この様な岩手県全体の活動は全国でも稀有な取り組みとして他の自治体等でも追随しようとしているようです。平成22年度から開始した、臨床研修病院内での「たすきがけ」研修は岩手県内の研修病院間の研修医の相互乗り入れを可能にすることが可能になりました。本学の研修医にとっては地域病院の実態を知り、一般臨床研修病院での幅広い知識(プライマリ・ケア)の習得に有利となります。一方、大学以外の臨床研修病院の研修医は本学での専門研修(いわゆる後期研修)にスムーズに移行できるようになります。本プログラムでは、初期臨床研修を通じて自らのライフプラン(将来構想)を思い描き、それに見合ったキャリアパス(当面の行動目標)を獲得することを目標としています。各分野の専門家が揃っていること、プロフェッショナルの指導やアドバイスを受けられること、そして大学院での学位取得など大学病院の持つメリットを最大限にいかすことが可能だと考えます。本学附属病院での研修が「医師としての人格を涵養し、プライマリ・ケアの基本的な診療能力を身につける」という研修理念を満たし、実り多きものにならんことを祈念致します。5Iwate Medical University